出岡先生より
日本では、ラテンアメリカ研究というと、マイナー、特殊という印象が強いかと思います。そして、クーデターと独裁者、「ラテン的ないい加減さ」、ドラッグといったステレオタイプ的なイメージに安住しているのではないでしょうか。
しかし、第一に、世界におけるラテンアメリカの重要性は、日本で多くの人が考えているよりもずっと大きなものです。そして、多くの問題を抱えつつも、ほとんどのラテンアメリカ諸国では民主主義体制がもう25年以上は続いています。一方で民主主義の理念は強く、他方で、長いあいだ民主主義を安定できない政治を続け、民主主義が維持されるようになっても大きな問題を抱えるこの地域の諸国の政治を学ぶのは、圧倒的にスリリングです。そうした相克の中で多くの社会運動や思想が生まれ、それは世界全体に影響力を持ち、モデルのようになった場合もあります。政策面でも、例えば「民主化」などの経済改革について、その「先進国」であるラテンアメリカ地域のモデル性が広く認められています。
第二に、ラテンアメリカ諸国の政治を研究することは、政治現象一般に関して多くのことを学ぶのに役立ちます。第一の点とも関連しますが、ラテンアメリカ地域研究は、権威主義体制、民主化、新しく民主化した諸国の政治のあり方などに関する政治学において、決定的に重要な役割を果たしてきました。
そうした一般的な重要性と同時に、やはり「ラテンアメリカ」が他と違う地域として持つ魅力が大きいのは言うまでもありません。音楽やスポーツ、そこの人々の素敵さなど、その一端はよく知られていることと思います。そうした地域について深く知ることは、とても楽しいです。よって、次のような方が大歓迎です。(1)ラテンアメリカ自体に元来関心がある人。(2)日本からの「遠さ」や「違い」に魅力を感じてラテンアメリカやその政治を学びたいと思う人。(3)貧困や経済発展の困難など、「南」に関わるテーマを、そうした現象がみられる地域の一つで学びたいと考えている人。先に述べたように、これらのテーマについても、ラテンアメリカ研究には多くの蓄積があります。(4)権威主義体制、クーデター、民主化、新しく民主化した諸国の政治などについての政治学に関心がある人。
ただし、ラテンアメリカ地域研究が、日本では確かに「マイナー」であるかもしれないこともあり、本ゼミでは英語文献の購読が多くなると思います。また、ゼミの運営では、ゼミ生の方々の自主性を重視したいと思います。それらに伴うかもしれない苦労をいとわず、ディスカッションの場では積極的に発言し、何よりしっかりと(でも、楽しく)研究姿勢を持つ、やる気がある方を歓迎したいです。